何故、生産性が上がらないのか?【4】

これまで企業の生産性を阻む要因として、「評価指標」と「組織設計」について解説した。
今回、生産性を阻む三つ目の要因「組織文化」について考察していく。

組織文化とは、企業組織の構成員の間で共有されている思考様式や行動原理のことを言う。言い換えれば、社員が行動を起こす際に、何を基準にして何を優先するか、その共通項としての行動の積み重ねが文化として醸成されていく。
迅速vs慎重、チャレンジvs確実、自律vs他律、放任vs統制、チームvs個人、トップダウンvsボトムアップ、競争vs協調、結果重視vsプロセス重視。様々な切り口で、自身の組織がどちらに寄っているかプロットしていくと、その組織文化の色が見えてくる。100社あれば組織文化の色は100種類存在し多種多様であるが、似たような色を集約していくと類型化できる。

 

Figure4は、組織文化を類型化する際によく使われるフレームワークである。
内向き・外向き・柔軟志向・安定志向の軸で4象限に分け、組織の特性を表現している。
ルール統制型は、官庁や規制産業に代表されるガバナンス重視の組織文化。目標達成型は、市場競争が激しく営業力が重視される産業に多い組織文化。社員参画型は、個人よりもチームで協調して仕事を進めることを重視する組織文化。変化対応型は、ベンチャーやスタートアップ企業に見られる機動性に富む組織文化。
自身が所属する組織が、何処の組織文化に属するのか、考えてみると面白い。4象限のいずれか、もしくは複数の象限にまたがって属することが見えてくる。

「ルール統制型」と「目標達成型」の二つは効率性を重視する特性があるので、理論的には生産性を高めるベクトルが働く。高度成長期からバブル期まで、日本企業は、この二つの特性を持ち合わせた企業が大勢を占めていた。それが成長の原動力になっていたのだ。
しかし時代が変わり、ネットとデジタルの到来そしてグローバルの競争の激しさから、企業に変化対応力が求められるようになった。加えて、個の力の集積だけでは限界があることが分かり、チーム活動による知恵の結集が求められるようになったのが、昨今である。つまり組織文化においては、上二つの象限(社員参画型、変化対応型)の特性を持つことが求められるようになってきたのだ。(Figure5)


長い期間、下の二つの象限(ルール統制型・目標達成型)に居続けている企業では、生産性向上の取り組みにおいて、なかなか結果が出ない。何故なら、昔から変わらない組織文化、つまり同じ考え方と同じやり方を踏襲しているから、やれるだけの効率化を済ませている。さらにこれ以上の生産性を上げるとなると、思考と行動様式を改める、つまり組織文化を変えていく試みが必要となってくる訳だ。
昭和の時代からの組織文化を引きずっている企業は、まだまだ多く存在している。その是非はともかくとして、これが生産性向上を阻む要因の一つになっていると考えられる。

次回は、最終稿として生産性を阻む四つ目の要因「人間心理」について言及します。

FIN.    April 22nd, 2022