何故、生産性が上がらないのか?【5】
企業の生産性を阻む要因として、これまで「評価指標」「組織設計」「組織文化」について語ってきた。最終回は、四つ目の要因「人間心理」について考察を重ねることとしよう。
組織活動における人間心理は、心理的安全性(Psychological Safety)という考え方が定着している。心理的安全性とは、自身のキャリアやポジション・イメージなどへの悪影響を心配することなく、集団内で安心して意見を言える場の状態のこという。
経営学者として著名なAmy Edmondson教授は、心理的安全性が低い組織には4つの特徴があると語っている。
– 無知だと思われたくない ⇒ 質問しない
– 無能だと思われたくない ⇒ ミスを報告しない
– うざったいと思われたくない ⇒ 提言しない
– 否定的と思われたくない ⇒ 現状を批判しない
誰もが心当たりがあると思う。
場を乱さない、そして場の空気を読むことが求められる日本の組織では、耳の痛い話だ。特に、経営者や上司の発言や指示が絶対視される組織においては、これらの4つの特徴は顕著だ。部下の社員たちは、言われたことだけしかしない羊の集団と化してしまう。
生産性向上の大きな障壁になることは、誰の目から見ても明らかであろう。
みずほ銀行が幾度ものシステム障害を起こし、その度に謝罪会見と経営陣の交代があったことは記憶に新しい。金融庁の立ち入り調査では「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない姿勢が原因」と指摘された。
まさに心理的安全性が低い組織の典型例だ。
心理的安全性の高い組織になることは、一朝一夕では成立しない。
経営者と管理職の一挙手一投足を、日々、部下の社員たちは見ている。その上で社員たちは、自身がどう言動するか決めている。上司から、少しでも威圧的な態度や理不尽な指示が発せられると、とたんに貝になってしまう。
大事なことは、どんな相手に対しても敬意を払い、自身に対して謙虚であり続けるだと思う。精神的な修練が、これからの経営者と管理職には求められていると考えている。
ここまで5回の投稿記事に分けて、日本の生産性が上がらない真の原因を「評価指標」「組織設計」「組織文化」「人間心理」を切り口として分析・考察してきた。
産業界の優秀なリーダたちの中には、現状を打破するために、既に変革に着手し、効果が出てきた企業もある。彼らの効力が少しずつ社会全体に広がり、日本全体がプラスに転換していくことを切に願うばかりである。
FIN. April 28th, 2022