気候変動に対する経営者の向き合い方
地球の平均気温は、直近までの130年間に1度上がった。特に北半球の上昇は著しく、同期間で1.2度上がっている( *1)。我々人間でさえ体温が一度上がれば、体調に異変を起こすことを踏まえれば、地球は異変を起こしていると考えてよいだろう。過去に例を見ない、ここ数年の気候変動は、我々の経験値としての過去の常識を完全に覆している。
地球全体は常にバランスをとろうとしているため、どこかの地で異常気象が発生すれば、離れた地で、その反動が湧き起こる。日本で猛暑が発生していれば、南半球のどこかで極寒や豪雪の気象が発生しているのだ。
第二次世界大戦終了後から今日まで続く世界的な経済発展と、それに伴う化石燃料の大量消費は、これからもしばらく続くことであろう。残念ながらこの現実を見据えると、我々の世代が生きている間に、地球温暖化の流れを食い止めることは極めて難しい。
この現実に対し、企業の経営者たちはどう向き合うべきであろうか。
自覚と謙虚の姿勢
企業を経営するということは、社会的生産活動の一端を担っていることである。生産活動には、必ずエネルギー消費が伴う。一般消費者の生活行動に比べると、企業活動は数十倍から数万倍のエネルギーを消費する。これは二次産業である製造業に限らず、三次産業のサービス業も同様だ。何故なら、我々は情報化社会の中でITというツールが欠かせなくなったからだ。PCやスマホが接続するサーバやネットワーク機器群は、24時間稼働状況にあって、それらが必要とするエネルギーは莫大である。
企業という存在は、社会に対し付加価値を創造し提供する立場であるとともに、エネルギーを大量消費する立場にある。企業を経営する者は、地球という資源の恩恵を受けて活動していることを、心の片隅に留めておくべきだろう。そして、地球温暖化という社会課題に、謙虚な姿勢で向き合わなければならないのではないか。私自身、自戒の念を込めて。
リスクマネジメント
氾濫・土砂崩壊・暴風雨・豪雪・地震・津波・疫病・戦争・テロ、これらは大規模な社会的混乱を発生させる重大なリスクだ。これらのリスクが、事象として顕在化することに対し、我々は抗うことはできない。
必要なことは、これらの事象が顕在化した際に、初動を含め、如何に対処するかということに尽きる。多くの従業員を抱える企業の経営者にとって、その家族を含めた対応が求められる。
経営者は、常日頃から先を読む力を試されている。このようなリスクが発生した場合どう動くか、といったシミュレーションの訓練はやっておくに越したことはない。特に、上記リスクの中で気候変動に関わるリスクの発生確率が、極めて高いことは誰もが実感していることであろう。
未来技術への理解と投資
日々の省エネ活動はもちろん良い取り組みであるが、それはあくまで一人の消費者としての活動の延長である。企業は消費するだけではなく、未来のための投資を行うことが出来る存在だ。
地球温暖化防止に役立つ研究開発や事業に参入することは、一部の企業にしかできないことかもしれない。しかし、地球環境に優しい新技術を搭載した機器や装置を購入することはできるはずだ。価格は、枯れた技術を搭載した既存製品よりも多少張るだろう。現場ではコストや効率がどうしても優先されてしまうが、敢えて高額な未来技術を採用する姿勢を取れるかどうかは、経営者の判断に尽きる。
未来技術が世に広がることで、生産コストが下がり、さらに世の中に広がっていく。この循環を作ることが我々に出来ることだと考えている。
FIN. July 8th, 2022
*1: 気象庁統計データ 世界の年平均気温より計算