改革プロジェクトを組み立てる時に最初に考えておくこと

DX(デジタルトランスフォーメーション)という時流に乗って、改革プロジェクトを立ち上げる企業は数多くある。
事業の行き詰まり、旧態依然とした仕事のやり方、新事業が生まれてこない企業文化、停滞する生産性、スピード感のない意思決定プロセス、不公正な人事評価制度、等々。見直すべきテーマは様々だ。
改革プロジェクトは基本的に全社に影響するテーマとなるため、経営者や事業責任者自らが旗を振ることになる。その際、最初に頭の整理をしておくとよいことを紹介していこう。

改革とは、何かを変えること

コロナ禍を経て、世の中があまりにもデジタルというキーワードに踊らされているせいか、デジタル技術の適用=DX=改革、と取り違えてしまいがちだ。デジタル技術はあくまで手段である。何かを変える時や、何かを新しく導入する際に、デジタル技術は極めて有効な手段となるが、その上位にある概念をしっかり定めておく必要がある。大事なことは、改革において何を変えるのか、その対象を明確にしておくことだ。
何も変えないまま、プラスオンで新たにデジタル技術やITツールを導入することは、改革でもDXでもない。従業員の負荷を増やし、生産性を落とすだけの価値のない取り組みに成り下がってしまう可能性が極めて高いので、十分に気をつける必要がある。

変えるべきことを考えるためのフレームワーク

大きく変えようと思えば思うほど、その影響範囲は大きくなる。変えてはいけないものまで変えてしまう可能性もある。俯瞰的な目線で、「変えるべきもの」「変えてはいけないもの」を考えていこう。
一方、社会情勢の変化や事業環境の変化によって、自然と「変わっていくもの」もある。逆に、多少の外圧があっても揺るがず「変わらないもの」もある。
フレームワークとしては、4つの象限に分けて、上記の要素を抽出していくことが有効だ。


このフレームワークで要素を抽出していくと、改革プロジェクトのスコープが明確になる。
「変えるべきもの」からは、プロジェクトの目的となりうる項目はもちろんのこと、プロジェクトが間接的に貢献できる項目も明らかになってくる。
また「変えてはいけないもの」「変わっていくもの」を抽出することによって、プロジェクトのスコープをさらに具体的に絞り込むことが出来る。「変わらないもの」からはプロジェクトの与件や前提として捉えるべき内容が見えてくる。
筆者が関わった改革プロジェクトの中から、実際に内容をプロットした例を以下に示そう。


この例は、全社的な業務改革プロジェクトが立ち上がった直後に、プロジェクトメンバーと合宿を行い、議論を重ねて1枚の成果物を作り上げたものだ。
最大の成果は、全員の頭の中におぼろげながら浮かんでいた「変えるべきもの」の存在が、明確な言葉となって意思統一できたことにある。
このフレームワーク自体は、決して難しいものではない。頭に中にあるものを、整理して言語化するときに役立つ道具の一つとなる。

FIN.   January 14th, 2023