営業とマーケティングの違い

営業とマーケティング、それぞれについての解説本は世にごまんとある。営業には営業のプロがいて、マーケティングにもプロがいる。個別の理論やノウハウはそれぞれの専門家に委ねることとして、ここでは営業とマーケティングの本質的な違いについて解説していきます。

営業は顧客を、マーケティングは市場を見る 

営業とマーケティングの違いを一言でいえば、「営業は顧客を見る。マーケティングは市場を見る」ということに尽きる。(Figure1)

営業の対象は顧客だ。顧客が何に困り、何を求めているのか、ヒアリングや調査を重ね、顧客の要望を満たすために提案する。顧客へ提供する価値と、それに対する対価のバランスが勝負だ。顧客が求める条件と会社が出せる条件のギリギリ一致するレベルで、契約をとってくる。営業の目線は、顧客と同じ高さに常にある。
一方、マーケティングの対象は、自社商品の置かれている市場が対象だ。そこには競合商品・類似商品がひしめいている。市場の中で、自社の商品は今どんな位置にあって、今後どんな位置にもっていきたいのか、突き詰める。その目指す位置に近づくために、様々な媒体を活用し、顧客へメッセージを送り購入を促す。結果、市場における自社商品の位置が変われば、マーケティングは成功だ。マーケティングの目線は、市場という枠組みを常に見上げている。 

KGIは同じだが、KPIが違う

営業もマーケティングも最終目標とする指標(KGI: Key Goal Indicator)は同じである。企業の最も重要な財務指標である売上だ。
しかし最終的な売上に至るまでの双方のアプローチや過程は、全く異なる。営業マンの行動やマーケティングの施策が、着実に売上に近づいているかどうか、それを測るための中間指標(KPI : Key Performance Indicator)を定めると、その違いが見えてくる。

Figure2は営業とマーケティングの代表的な指標を示している。営業もマーケティングも最終的に目標とする売上に至る道のりは長く険しい。その過程でいくつかの関所を設け、この先、目標とする売上に正しい道のりで近づいているかどうかを測るための指標がKPIだ。また、これらの指標は社員の努力の結果とも見なせる。従って、組織の評価と社員目標設定、人事評価にも活用される。 

個の積み上げが営業、構造から分解するのがマーケティング

営業とマーケティングは、思考回路と発想の起点が違ってくる。
顧客という個に対して丁寧に対応していく営業は、一つ一つの行動の積み重ねがベースだ。
積み上げていった数字が、組織としての売上実績となる。積み上げていく道のりを効率的に進むために、一つの良い行動が出てくると、それを事例として共有し、みんなで同じ行動を取るように促していく。

一方、市場という大きな枠組みから解いていくことを求められるマーケティングは、全体感を捉え、それを理解できるレベルまでどう構造化して分解するかという概念的な思考が求められる。自社商品を競合他社と比較して、いかに差別化するかということに力点に置くため、他とは違う独自の見え方や伝え方が重要になってくる。(Figure3)

以上、営業とマーケティングの本質的な違いを三点解説した。
経営を担う人材には、双方の視点を持つことが大切だ。事業の行き先を定めるような大きな戦略を描く際は、マーケティングの視点が必須となってくる。一方、重要顧客に対峙して契約までの道筋を立てる際には、営業の経験とノウハウが求められてくる。
営業とマーケティング、それぞれの目線と思考を切り替えることによって、経営判断の精度が上がっていく。

 

FIN.      May 6th, 2022