経営課題には二種類ある
「うちの会社は問題だらけだ」経営者がよく口にする言葉だ。
企業を経営すること、つまり事業を継続することにおいて、問題がつきまとうのは常だ。何故なら、元来人間は不完全であり、その集まりである企業が完全を目指そうとするからである。生産性を上げるために、正確性や効率性を追求する。今後の成長のために、未来を予測して手を打とうとする。完全ではない我々が実行する訳だから、シナリオ通りに上手くいくことはまずない。問題は常に発生するのだ。
経営課題とは
最初に経営課題の定義をしよう。経営課題とは、経営陣が主体的に解決すべき問題、と筆者は定義している。
企業で起きる問題は様々ある。事業の将来を左右するような問題もあれば、社員同士のいざこざのような些細な問題もある。すぐに解決しなければならない問題もあれば、放っておいていいような問題もある。また、時間が経てば解決する問題もある。
まず仕分けが必要だ。解決しなければならない問題はどれなのか、それを明確にすることにある。仕分けを行えば、経営者にとって解決すべき問題は、さほど数は多くないはずだ。さらに、来年以降に回せる課題をフィルターにかければ、さらに絞れるはずだ。数は多くなくとも、一つ一つは非常に重い課題である訳だが。
経営課題①: 問題解決型
事業が直面している深刻な問題があるとしよう。それは正に経営課題である。事業の浮沈は収益に直結するだけに、早期に解決しないと、会社の財務や社員の処遇、取引先との信用など様々なところに影響が及ぶ。影響が大きければ大きいほど、それは複数部門に及ぶことなので、必然的に経営陣も参画するプロジェクトチームが結成されることになる。
問題の解き方は、いくつかの手法があるが、その王道は問題の根本原因を特定することだ。
現場で発生している問題はあくまで事象である。経営課題となる事象は、大体、複合的な要因が絡み合って発生している。だからこそ、その問題を引き起こすべく悪さをしている根本の原因を突き止める必要がある。真の原因が掴めれば、解決への道筋は七合目に来たのも同然だ。原因を潰すための施策を講じることで、解決の方向へ舵を切ることが出来る。
経営課題②: 未来志向型
一つ目で言及した経営課題は、既に顕在化している問題を解決することであった。経営課題にはもう一つの種類がある。潜在的な問題を解決することだ。それは、将来起こりうる可能性が高い事象に対し、未然に防ぐために手を打つことと同義である。
- このまま放っておけば、市場は縮小し事業は頭打ちになる
- 今のままだと社員は現状に満足し、チャレンジすることも成長することもない
- この先、競合が台頭してきたときに、立ち向かうだけの準備が出来ていない
このような危機感が、経営者の頭の中に醸成されてきた時には、第二の経営課題の出番だ。
潜在的な問題であるから、危機感自体は経営者と一部の社員しか持ちえない。多くの社員を巻き込んで、会社や事業を変えていくには、工夫がいる。それは「あるべき姿、目指す姿」を描くことだ。会社の未来を見据え、どうありたいかを定義する。それによって、現状とのギャップが自覚できるはずだ。あるべき姿と現状とのギャップを埋めるために、何をやればいいのか考え、施策を講じていくのが第二の経営課題の解き方だ。
経営課題に対する向き合い方
第一の経営課題、問題解決型は既に問題が発生している訳だから、会社にとって最優先事項だ。その根本原因を見出し、二度と起こらないようにする必要がある。その過程には、必ず痛みを伴う。病気が発症した後の治療において、苦痛を伴うのと全く同じだ。その痛みに正面から向き合い、意思決定を出来るかどうか・・・そこに経営者の資質が問われてくる。
一方、第二の経営課題、未来志向型は潜在的なものであるから、課題として提起すること自体に資質が問われてくる。現状に困っていないので、賛同者が少ないはずだ。従って、強力なリーダーシップが求められるのだ。
未来志向型の経営課題に取り組む企業に共通していることとして、企業と事業の将来を常に真剣に考えている経営者がいる。
問題が起きてから対処するのではなく、起きる前に未然に手を打つ。そのような未来志向型に如何に転換できるか。これからの日本企業に強く求められていることだと考えている。
FIN. August 6th, 2022