既存事業と新規事業のマネジメントの違いを理解する
企業経営では、既存の事業で利益を稼ぐとともに、新規の事業に投資していくことが求められる。何故なら、既存事業の利益体質がいつまでも続く訳ではないからだ。事業を長期のスパンで見ると、成長期・拡大期・低迷期・再拡大期(または衰退期)を変遷するのが世の常だ。
既存事業で収益を出している間に新規事業に投資し、既存事業が低迷してきた時には新規事業が稼ぐ体質に転換できていることが、理想的なマネジメントスタイルである。
では、マネジメントを行う上で、既存事業と新規事業にはどんな違いがあるのか、基本的な事項を理解していくことにしよう。
既存事業は短期目線、新規事業は長期目線
売上と利益の予算が課せられる既存事業は、週次・月次・四半期・半期・年次のそれぞれで達成状況をトラッキングされることが宿命だ。必然的に、短期目線となってくる。社員に対して、結果につながる行動が常に求められる。
一方、新規事業では、将来、会社の屋台骨となることが期待されている。売上額は先行指標に過ぎず、初期段階で赤字であることは容認される。あくまでも長期目線で、投資に対するリターンを求めるモデルだ。産みの苦しみを経て、事業を大きく成長させていくために、社員には、既存の枠に捉われない大胆な行動が不可欠となってくる。
既存事業の管理職は経験が問われ、新規事業の管理職はセンスが問われる
既存事業と新規事業とでは、求められるリーダーとしての資質にも違いが出てくる。
既存事業は、機能単位で組織を設計できるので、型にはめやすい。型を経験として積み重ねることで、着実に知識とスキルを身につけることができる。階段を一段一段上るように、管理職への道を歩むことが可能となる。
片や、新規事業のリーダーは、今まで誰も歩んだことのない道の先頭を立つことが使命だ。未開の地を進むので、これまでの常識や経験則は逆に足かせになる。自身の考えをしっかり持ち、常に先を見据えて行動するセンスが求められてくる。
既存事業には確実型の社員、新規事業には自律型の社員
既存事業を担う部門は、予算に基づき、着々と日々の売上と利益を上げていく。従って、社員は、確実に業務を遂行する能力が求められる。社員の役割と権限をポジションに応じて設定できるので、ヒエラルキー構造の組織になるのが通常だ。組織としての統制が重視され、失敗や判断ミスは、極力避けることが出世の要綱となる。
他方、新規事業に配属される社員は、自らで考えることが求められる。指示待ち型の社員は不要だ。失敗を恐れず、チャレンジしていく姿勢が必須となる。加えて、個々人の力に頼るのではなく、チームワークで力を結集することも事業化における重要な事項だ。
既存事業を担う部門は投下される社員の数が多く、規模も大きい。新規事業の部門は、人数は限られている上に、常に赤字だ。必然的に、既存事業部門の声が大きくなる。
社内のそのような声に動じず、強い意志をもって新規事業を牽引していけるかどうか・・・それは経営者の手腕に掛かっている。
FIN. August 13th, 2022