仕事ができる社員には3タイプある
「彼は優秀だ」「彼女は仕事ができる」といった評価を得ている社員は、企業のどの組織においても一定数いるはずだ。上司からの信頼があり、何か事があれば必ず声のかかる存在の社員である。では、仕事が出来る社員とは、どのような能力を持った人たちのことを言うのであろうか?
「仕事ができる」ということを因数分解すると、次の三つの要素に分かれてくる。
・どんな仕事をやるべきか設定できる
・その仕事をどう処理するか考えられる
・その仕事を最後まで完遂できる
仕事が出来る社員は、上記三つのうちのいずれかを得意としている。筆者は、それぞれのタイプの社員を「課題設定型」「問題処理型」「作業遂行型」と呼んでいる。以下、それぞれについて解説していこう。
困難な問題に立ち向かう「課題設定型」
会社組織では、常に数々の問題が起きる。それらを客観的に見つめ最優先の問題を見極め、その問題解決のために行動を起こせる人、それが課題設定型の社員である。課題設定型の社員にとって、問題を解決することが最大の関心事であり、それが目的となる。立ち向かうのはいつも大きな問題だ。当然、自分ひとりだけの力では解決することはできないので、解決に向けて必要なリソース(資金、専門知識・専門能力を持つ人、設備や道具)を集めることに全力を注いでいくのが、このタイプの特徴である。
そつなく仕事をこなす「問題処理型」
問題処理型は、問題解決に当たり、そつなく、そして失敗することなく対応していける人だ。
このタイプの特徴としては、自らの手に負えない問題には関わらない。自身によって解決できると踏んだ問題に対し、着手する傾向にある。学力テストで言えば、5教科7科目でどれも平均点を超え、偏差値は60以上を常にとれる秀才型のタイプだ。問題を解くことにおいて質とスピードに卓越した能力を発揮するので、経営者にとっては大変使い勝手が良い。一方、問題を作成する側、つまり新たな課題を設定したり、困難なことにチャレンジしたりする側に回ることは、まず無いことも特徴だ。
作業の質と量を担保できる「作業遂行型」
自ら引き受けた仕事を、一定の質を担保しながら最後まで完遂できる社員も重宝される。
作業遂行型の社員だ。課題が設定されたのち、その実行段階に移っていくと、莫大な量の作業が発生するが、その作業を滞りなく、そつなくこなせる人材がこれに当たる。何をどんな順番で作業すればいいか、誰にどう働きかけて作業をお願いすればいいか、といった段取りをデザインでき、そして実務を進めていける能力だ。自ら進んで動くことはしないが、受けた仕事は最後まで完遂することが大きな強みである。
これからの日本に求められるリーダーのタイプは?
「課題設定型」「問題処理型」「作業遂行型」、どのタイプも会社組織にとって必要な人材だ。上手く機能している会社では、この3タイプの人材たちが絶妙なバランスで配置されている。課題設定型ばかりだと会社の中が取っ散らかってしまうし、問題処理型ばかりでは未来のビジョンが描けない。作業遂行型ばかりでは、指示待ちの受け身の組織になってしまう。
日本でこれまでに輩出された大企業の社長の顔ぶれは、問題処理型のタイプが圧倒的に多かったと思う。自らリスク取って、誰もやっていないような難しい課題設定をしなくてもよかった。世界を見れば常にどこかに先例があり、それを上手く自社に取り込むことができれば成功につなげることが出来たからだ。加えて、出世していく過程で、減点主義の評価制度が問題処理型のタイプに有利に働いたというのもあっただろう。
現在の社会と企業を取り巻く環境は、加速度的なテクノロジーの進化、地球環境の変動、米中露欧の綱引きによる地政学リスク、コロナ対策による消費者心理の変化など、誰にとっても過去の経験則が活かせない未知の領域だ。先例が出てくるのを待つことなく、勇気をもってチャレンジしていくことが必要だ。それはまさに課題設定型のリーダーに備わっている能力だ。その能力と気概を持ったリーダーたちの出現を、私はいつも楽しみにしている。
FIN. September 3rd, 2022