ソリューションビジネスとは? 企業が提供する付加価値を構造化する
多くの企業が“ソリューション”という言葉を前面に打ち出している。サービスの名称・組織の名称・広告コピー・経営者のメッセージ等々、至る所で目に付くようになった。
そもそもソリューションとは何か、そしてソリューションビジネスと他のビジネスとの違いは何なのか、考察してみよう。
企業がソリューションという言葉を使うときの意味は?
語源のSolutionは”問題解決”という意味である。企業がソリューションという言葉を使うときには、“お客様の問題を解決します”と言っているわけだ。企業は、お客様に提供するサービスの一つとして、問題解決という行為を商品化しているのだ。つまりソリューションは、その企業が提供している製品やサービスに対して、付加価値をつけて売っていることになる。
問題解決といっても簡単な問題であれば、顧客は自身で解決することができるから、ソリューションは不要である。複雑で難解な問題であり、かつ顧客自身が自らで解決できないときに、ソリューションビジネスは活きてくる。
複雑で難解な問題とは、主に以下のような場合だ。
・複数の選択肢から最適な製品の組み合わせで構築するシステムやサービス
・新しい技術を活用して、新規に開発する商品やサービス
・導入に際し、特定の技術やノウハウが必要となってくる製品やサービス
もともとソリューションという言葉は、IT事業者やシステムベンダーがよく使っていた。昨今では、上記に該当すれば、金融・製造・運輸・広告など業種問わず、ソリューションビジネスを標榜するようになっている。
ソリューションは誰に提供するのか?
問題解決というからには、問題を抱えている組織の責任者や担当者が営業のターゲットとなってくる。往々にして、そのターゲットは現場で多忙を極める立場にある。まず、見つけ出すのが難しい。本当に問題を抱えている人は誰なのか、現場で意思決定できる責任者は誰なのか、そこにたどり着くことが肝要だ。正しい営業先(ライトパーソン)が見つかり、コミュニケーションできるようになることが、営業の第一歩となる。次のステップは、ライトパーソンから悩みを聞き出すことだ。それが、ソリューション営業の基本である。
ソリューションの提供先は、通常、法人が相手だ。初回コンタクトから受注に至るまでにかなりの時間と手間を要するので、どうしても受注単価が高額でないと割に合わないためだ。例外的に個人向けのソリューションとして、富裕層向けの金融サービスなどがある。
ソリューションビジネスと他のビジネスは何が違うのか?
ソリューションビジネスを理解するために、製品を販売するビジネスの違いを考えてみよう。
製品カタログを持って、客先に営業に行くことを想像してみる。営業マンは、製品ごとの機能や特徴、競合商品との比較などを、懸命に説明するはずだ。顧客である担当者は、その説明を聞いて、自社が抱える問題を解決するのは、どの製品が適切か選択をして購入を判断する。営業マンは、顧客がどんな悩みを抱えているとか、どんなことをやりたいか、ということを必死に聞き出そうとするが、情報は最小限しか聞き出せないだろう。何故なら、顧客は自らで問題解決できると踏んでいるから、余計な情報は開示しないのだ。
しかし、複雑で難解な問題の場合は、そうはいかない。顧客は自身で解決できないから、依頼先に解決を手助けしてもらうしかない。だから情報を開示して、それに見合う提案を求めることになる。
ソリューションのプロセス
顧客の問題を解決していくには、複数の工程を必要とする。大きくは4つのプロセスに分けられる。
1. 問題を特定する
顧客が真に解決したい問題は何か、そしてその原因は何処にあるのか、それを特定することが最初のステップだ。現場の担当者と責任者の立場の違いだけで、問題のレベルが変わる。大小様々に表現される問題と思われる事象から、“まさにこれを解決したい”と顧客が納得するだけの問題を特定することが出来れば、第一関門クリアだ。
2. 問題の解決方法を提示する
問題の解決方法は一様でない。複数の選択肢のうち最も効率的で、かつ現実的な解き方を提示することが求められる。その解法では、自社の製品・サービスに加え他社のものも組み合わせるのも一つの手だ。顧客は、製品を求めているのではなく、問題解決を求めているからだ。
3. 問題解決のための新しい仕組みを構築する
ここからは実装と言われるフェーズになる。多くの技術者が投入され、新しい仕組みを作り上げていく。QCD(=Quality 品質, Cost 費用, Delivery 納期)を担保しながら、人と金と物(製品/設備)と時間をコントロールする。プロジェクトマネジメント能力が試される期間だ。
4. 既存の仕組みから新しい仕組みに切り替える
新しい仕組みに移行して本番稼働する最終局面だ。移行手順を組み上げ、細心の注意を払いながら、既存の仕組みから新しい仕組みに変えていく。ここでは、不測の事態に備えるリスクマネジメントの能力が必須だ。
これらの工程を完了させるには、それなりの期間が必要だ。短くて3か月、長ければ2-3年に及ぶものもある。経験とノウハウ、そして高い技術力が求められる。それがソリューションビジネスである。
見合う対価を請求するのがソリューションビジネス
残念なことに、自社の製品を売るためだけにソリューションと銘打っている企業を沢山見かける。本来は、製品としての対価と、ソリューションサービスの対価は別だ。ソリューションサービスは高度な付加価値である。価値自体の具現化することも必要だし、その価値を知らしめるだけのプレゼンテーション力も必要だ。
付加価値としての対価を請求できるだけのビジネスこそが、ソリューションのあるべき姿だ。それを確立していくことが企業価値の向上につながってくる。
FIN. November 6th, 2022